台湾ICT産業、ポストコロナ時代
日台連携のチャンス
呂正華・経済部工業局長兼TJPO主任インタビュー

日台産業連携推進オフィス主任 呂正華

Q1:まずは、新型コロナウイルスの感染拡大を成功に封じ込めたこと、おめでとうございます。日本の読者の方々は台湾の感染防止対策の成果に高い関心を持っており、とりわけ「マスク生産国家チーム」についてですが、工業局としてどのような役割を担い、どのような働きかけをしたのかをお聞かせください。

17年前のSARS流行を経験したことから、国民も政府部門も今回の感染状況や情報に警戒を強めた。マスクを生産と販売の二つのパートに分けて、経済部が定めた役割分担に従って、部長の指示でマスク生産は工業局、販売は貿易局に任された。

旧正月の前、一月末に武漢は既にロックダウン措置がとられていて、感染症指揮センターは国内のマスク備蓄が不足していることを察知し、工業局に生産キャパシティの確認を要請した。そして一月末には医療用マスク、紡織マスクの輸出を禁止した。1月時点で1日当たりのマスク生産量はわずか188万枚だった。約2300万人の人口のに対し明らかに不足していた。そこでまずマスク生産の作業者を一日当たり1シフトから3シフトに増やした24時間の生産体制を導入、マスク日産能力は従来の188万枚から400万枚に拡大した。最大の問題は人手不足だったが、幸いにも軍が包装作業を支援してくれた。

しかし、400万枚では足りるはずもなかった。指揮センターは60台のマスク生産設備を購入と決めた。自動化生産で一分間当たり120枚生産できるとすると、一天当たりの生産量は8割に達する見込みで、装置一台当たり10万枚のマスクを生産できる計算となる。一刻を争う事態だったため、当時の沈経済部長は自ら工業局のスタッフを引き連れてマスク製造設備の業者を訪ね、メーカー二社に計60台の装置を発注した。しかし、二社ともに中小企業で、普段1ヶ月間に製造可能な台数はわずか1、2台。生産台数を60台に引き上げるには、人手不足という大きな壁に直面した。そんな中、工作機械の業界団体(TMBA)、理事長の呼びに応じ、団体全体29社の企業が助力し、2月からマスク生産設備の製造が急ピッチで進められ、3月5日には、一ヶ月間で60台のマスク生産設備はすべて納品された。

また、2月末の時点には短期間での感染症収束は難しいと判断した指揮センターはマスク生産設備を追加発注し、計92台を購入、日産能力は900万枚を超え、当初増産した400万枚と合わせると、1300万枚に達した。三月から四月にかけては一般企業もマスク生産のために設備を投入し、その数は約30-40台に上る。そして5月20日以降、総生産量は一日当たり2000万枚を実現。つまり、台湾は4カ月という短期間にマスクの日産能力を当初の188万枚からその10倍に向上させたのである。

生産能力が2000万枚に達する寸前で、三層構造マスクの真ん中にある粒子状物質を隔離するためのメルトブロー不織布が不足していることが分かった。この時、国際市場でのメルトブロー不織布の価格は10倍に跳ね上がっていたのですが、私たちは不織布公会を経由して材料を一括調達し、国内への供給を優先することをお願いした。工業生産における「人(Man)、設備(Machine)、材料(Material)、方法(Method)」とは、公協会とメーカー、そして軍動員による人的支援、政府出資によるマスク生産設備の導入、公協会とメーカーによる原料となるメルトブロー不織布の原料の確保、この三つの条件が揃ったうえで、工業局が提供するプラットフォームを利用して、国内の需要の拡大に見合うだけの十分な供給を確保すること。

工業局は産業と密接な関係にあったため、当時の沈部長は工業局でのキャリアも長く、産業を熟知しており、誰もがその呼びかけに快く応じた。私たちは彼のリーダーシップの下で今回の任務をやり遂げることができたのだ。

日台産業連携推進オフィス主任 呂正華

Q2:台湾の報導によりますと、こうした感染防止対策の成功は新規テクノロジーを多く活用したことが奏功したとも言われていますが、テクノロジーが実際どのように感染防止に役立てられているのか、教えていただけますか。

感染防止対策の期間において、ICT情報通信応用技術はまだまだたくさんのアイデアと可能性を秘めていることを示してくれた。マスクを例として取り上げると、工業局は工場の生産を管轄しており、生産したマスクは配送しなければならない。中央感染症指揮センターは、薬局で販売するためのマスクの配達を郵便局の郵便配達員に依頼した。しかし、薬局のマスク在庫が分からないのは不便だった。そこで、政府がこれまで推進してきたopen dataを活用して、多くの若者が知恵を絞ってマスクの在庫状況を確認できるサイトやアプリの開発に乗り出した。「IT担当大臣」唐鳳(オードリー・タン)政務委員も彼らの討論に加わり、政府が後押しする形でマスクマップが誕生。マスクマップと情報通信システムがあれば、販売店は「いくつ売れたのか、在庫はどのくらい残っているのか」といった情報をフィードバックし、これにより、マスクを買い求める人々は事前にマスク在庫数を確認し、購入する店舗を選ぶことができるわけです。これらのサービスを開発したのは民間の有志らで、運用当初は供給と需要に差があったため、マップを参考に買いに行ったものの売り切れていたといった状況も見られたが、情報通信技術の運用により、マスクの供給と需求が一目で分かるようになった。修正を経て、マスクの品薄状況は徐々に改善させたが、こうした「マスクマップ」は情報通信技術の活用に向けた実験的な取り組みとして、生活に密着したものとなっている。

情報通信技術が活用されたものとしては感染防止対策期間におけるテレワークは、もう一つの例です。これに伴い、ノートパソコン、デスクトップ等の設備に対する需要が増えたため、メーカーに多くの受注が殺到した。テレビ会議プラットフォームのビジネスチャンスも拡大している。台湾メーカー「訊連cyberlink」が提供するWEB会議システム「Uミーティング」はその一つである。訊連はpower dvd再生ソフトの専門メーカーで、インターネットの普及に伴い、プラットフォームに参入した。今回の感染防止対策期間はメーカーにとっても台湾の人々に国産製品をアピールできるチャンスであり、海外製品との比較を行い、製品の使用感や感想を参考に製品改善に役立てることができる。工業局の立場としては、国産の会議システムをぜひ使っていただきたい。そして、ユーザー体験に基づく意見や提案は、よりよいサービスの提供につながることでしょう。

他にも捷運(MRT)の駅、高鉄(台湾新幹線)、その他の施設の入口で検温が行われているが、これには非接触式の体温計と検温大型パネル(サーモグラフィー)の二種類がある。工業局の入り口にもサーモグラフィーが設置されている。これらのテクノロジーを活用することで、公共の場における発熱者のスクリーニングを行い、発熱者に対し外出の自粛を求めるなど、感染拡大防止が図られている。毎日体温測定を行う習慣がない人でも、会社や訪問先では検温が義務付けられる。これも感染防止対策期間におけるテクノロジーの發展の一つで、情報通信技術とインターネットの応用を結合した形式である。

その他の部会、例えば衛生福利部は在宅検疫、在宅隔離の措置を講じる際に、在宅隔離対象者に携帯電話を配布し、隔離者が自宅から出ていないことを監視するために携帯電話の位置情報検知が行われている。これもテクノロジーを活用した一例である。多くの団体によって様々な問題解決ソリューションが開発されているが、実際に使われていないものもある。しかし、テクノロジーを上手く活用することでこれまで解決が難しいと思われていた問題を解決できるのは確かなことだ。

日台産業連携推進オフィス主任 呂正華

Q3:不本意でも、新型コロナウイルス感染症の拡大は世界におけるAI、5Gなどの新規テクノロジーの進展を加速させる要因にもなったと言えるでしょう。感染防止対策期間を経て、世界各国ではwith corona「ウィルスと共に生きる」の新しい生活様式が話題になっています。このような状況の下、AI、5Gなどの新規テクノロジーの推進に関する今後の方向性、工業局として台湾のAI、5Gメーカーに対してどのような支援策を講じていくべきか、局長のお考えをお聞かせください。

台湾はだいぶ前から、AIと5Gの発展に向けて積極的な取り組みを展開してきた。行政院テクノロジー会報オフィス(BOST)は2年前から「AI行動計画」を推進し、AI技術の成熟度は徐々に高まっている。AIに関して言えば、私が台湾大学を卒業した30年前には、既にNeural Network(ニューラルネットワーク)のモデルが構築されていた。例えば、洗濯機の標準コースで注入する水や洗剤の量などを自動で調整する機能にもそれが応用されている。昔はチップの計算能力が低く、実際の応用分野は限られていたため、ここ二、三十年では、AIの学習は理論重視で、algorithm(アルゴリズム)等の開発が中心となっていた。

近年では画像識別やそれらをAIの学習素材に転換する分野が目覚ましい発展を遂げている。AIは学習素材を用いた学習経験に基づき判断を下す。テクノロジーの進展に伴い、チップの計算速度は速くなり、識別技術の研究開発が盛んに行われるようになった。例えば、「犬の顔認識」ではクッキーを犬の顔として誤認識するようなことがなくなる。この頃は多くのCNN畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Networks)の技術が生活、工場、交通、医療の様々な場面で活用されていることから、人材の確保・育成は極めて重要であることがわかる。したがって、行政院から工業局に与えられたミッションは「実戦経験をもつAI人材を育てること」である。

実戦経験とは戦場で戦う術を身につけていること。しかし、従来の教科書に頼った学習方法では技術に関する知識を習得するのみで、いざ応用しようとしたときに再び工場で学び直さなければならなかった。だから私たちはOJT(on job training)形式を推奨している。大学院の専門課程のように、問題設定をしてからそれを解いていく、その方がずっと面白いし、実務に即している。そのため、私たちははAIの人材育成プロセスを「企業が出題し、人材が問題を解く」と称している。

私たちは多くの公協会とも接触した。例えばPCBプリント基板協会は銅箔上の欠陥を検出するためにAOI(自動光学検査、Automated Optical Inspection)が行われていた。データが大量に蓄積された今では、それらのデータを使った計算や照合により、分類や識別が可能となった。顆粒沈積やバラツキなど、欠陥の形はそれぞれ異なるため、それらのデータを蓄積することによって、人による検査が不要となる。AIは一定のレベルまで学習すると、合否判定や不良品の識別ができるようになり、スマート工場での運用に適している。AIを使ったタイヤ製造プロセスの簡略化はブリヂストンからの出題で、台中の楓康スーパーからはりんご選別用AIの開発が出題され、消費者はアプリを使ってりんごの甘さを確認することができる。

企業が実際に遭遇した問題を学生たちがチームを組んで問題解決を図る。学生たちは問題解決のために学校に戻って勉強したり、インターネットもしくはバーチャル環境を通じて技術をしっかり身につけなければならない。この形式を我々は「AI GO」計画と呼んでいる。AI GO以外にも、資料や公協会のメーカー事例を広く収集し、それらをbenchmark(ベンチマーク)とする「AI HUB」計画も同時に進められている。HUBには多くのスタートアップ企業が集まり、互いの知見を軸に学び合うことができる。ここ二、三年、工業局はこの二つの計画の推進に力を入れてきた。これからもその推進に尽力していく所存です。

5Gに関しては、台湾は今年、国内の通信事業者4社に対し、5G商用ライセンスを付与した。中華電信は今年(2020)の7月に5Gサービスを開始する予定で、それに備えて我々も入念な準備をしてきた。5Gの最大の特徴である「低遅延、高速・大容量」、その特性をどのようにサービスに生かせるか、5Gにとって重要な課題となる。4Gから5Gへの移行は通信速度の更なる高速化だけでなく、IoT(モノのインターネット)と連携することで、膨大なデータ通信が可能となり、幅広いサービスでの応用が期待されている。通信サービスのほかにも、プライベートネットワークでの応用が可能で、例えば数多くの部品や生産プロセスが存在するスマート工場では、仕掛品はagv(無人搬送システム)によって次の作業ステーションに搬送され、作業が行われる。情報通信技術の発展によって、プロセスごとに製造履歴が記録できるようになった。これも工業4.0の一環に位置づけられる。

というわけで、もしスマート工場の導入に合わせて、5Gの通信技術を利用して、テクノロジーによる省人化を実現させると同時に、製品の品質を維持することができれば、それは素晴らしいdemo siteとなるでしょう。台湾の5Gサービスはまだ始まっていないが(取材時点)、工業局と英業達(インベンテック)は桃園亀山でスマート工場の応用実験として、BtoBの工業応用に既に着手している。

BtoCの応用としては野球観戦、コンサート鑑賞もしくは媽祖繞境(巡礼)などが考えられる。いずれも多くの人が集まる場で、5Gのレンズを通して、内野における細かい動きをキャッチし、映像をリアルタイムに伝送できるようになる。外野席であっても、場内の選手1人ひとりの動きだけでなく、ピッチャーの勝率等の情報を確認することも可能となる。これらは5G応用の付加価値であり、民衆にとって身近で実感できるものとなっている。

コンサートにしても、例えばAの場所にいるギターリストと、Bの場所にいる歌手が感染防止対策の影響で台湾に来られない場合、(ホログラフィー)技術を使って舞台に映像を投影することで、観衆からすれば、離れた2拠点にいる二人が同じ舞台で共演しているように見える。現在、こうした新しい試みが次々に行われている。さらに工業局は三立テレビと連携して紅人榜という歌謡オーディション番組を企画しており、新しいオーディション方式を開発することで、演出者が実際に同じ舞台に集まらなくても、5G通信を通じて視聴者に同じ舞台で共演しているような視聴体験を提供することができる。

媽祖繞境(巡礼)については、道路脇の見学者には「鑽轎腳(神輿が通る道の上に伏し、頭上に通らせる儀式)」の様子はほとんど見えていない、こうした問題も5Gを活用すれば解決できる。今年デモンストレーションを行う予定でしたが、媽祖繞境(巡礼)活動は感染症の影響で規模が縮小され、延期となってしまったため、万全な準備をすることができなかったものの、いずれの事例も民衆に5G応用のメリットを実感してもらえるもので、このような経験を積むことで、実際に開発(新規応用)する段階において、メーカーはより多くの応用ソリューションを取得できる。国内におけるソリューションの試行錯誤を重ねることで、メーカーはそれらの経験をもとに、その他のシーン、または他国での応用を実現できる。これにより、台湾産業の海外展開を牽引し、海外の人々にもよりよいサービスを提供し、台湾メーカーにとっても利益を創出できる。

Q3.5:AIについてお聞きします。AIでは大量のデータを元に学習し、モデルを確立する必要がありますが、台湾では大量のデータを取得することが比較的難しいと思われます。将来、データの蓄積と取得において、どのように企業をサポートしていくべきだと考えておられますか?

政府のオープンデータを利用すれば、大きな問題はないと考えています。これらは、元から公開されているものだからです。しかし、取得が比較的困難なデータもあります。例えば、スマート医療の検測に関して、私がもし患者であればプライバシーの保護を希望するはずです。ですが、匿名化が進むことにより、可能性が広がります。例えば、肺癌のエックス線写真について、医者も一人の人間にすぎませんから、一生のうちに蓄積できる症例だけでは、判断の正確性が足りない部分が生じる可能性があります。そのことから医療においても各種の症例をマークし、AIに正常細胞と癌細胞のデータを学習させ、AIデータベースの初歩的な分析を行った後で、さらに医者が判断をするべきであると、多くのAI科学者は考えています。実際に医療を行うのは医者自身ですが、多くの人々がデータを整理して医者をサポートしたうえで医者自身の経験を加えれば、治療はより正確なものになるでしょう。

今まで科技部のサポートのもとに、すでに4つのAIデータベースが創設されました。科技部は診断精度の向上を図っています。これらの症例を徹底的に分析することができれば、医者もより正確な判断を下すことができます。その仕組に含まれたデータの匿名化や、患者によるデータ提供の意向など問題について、まだまだ時間をかけて社会全体と会話する努力が必要とされますが、これらは全人類の医療を向上させ、多くの患者を助けることにつながるので、多くの人々は積極的な姿勢を見せています。将来の5Gが発展していくためには、実務的発展とテクノロジーの運用に加え、情報の安全性が非常に重要になります。それらは全て、国の重要政策の一環でもあります。

日台産業連携推進オフィス主任 呂正華

Q4:日本の中央政府や地方政府では、ICT技術とオープンデータによる地方創生を目指しています。台湾では「スマート城郷」と呼ばれているものです。そこで、台湾においてはICTとオープンデータをどのように利用してスマート城郷を推進しているのか、そして日本にも適用できそうな台湾の特色あるソリューションにはどのようなものがあるのかについて、お聞かせ願えないでしょうか。

ここ数年、工業局では確かにスマート城郷を推進しています。しかし、行政院が推進している地方創生も日本の基準を参考し、各地方の特色のある町、デザインを宣伝、あるいは地方産業との連携ををサポートするものです。工業局は産業分野を担当しているため、推進にあたっては産業の観点から、地方の特色と結びつけ、産業に関する要素を地方の新たなテクノロジーの応用分野に導入しています。また、地方試行の中で成功したパターンを他の都市へ再現し、さらにソリューションを商品として世界各地へと販売することを図っています。例えば、台北のバスターミナルでは里帰りの利用者のため、他の地方へ運行する業者が多くあります(統聯、国光、アロハ等)。業者ごとに席を予約することはもちろん可能です。しかし、業者は利用者の立場に立っ発想から、「総合予約」システムを推進し、全ての業者の窓口を一つにまとめることにより、受け付けた順番に席を効率的に予約していくことができるようになりました。

最も重要なのは、乗客を目的地まで安全に送り届けることですので、個人的要望がなければ、どの席を予約しても構わないですが、複数の業者を指定して、予約すること可能です。我々はそのためにアプリ(台北バスターミナルAPP)を作成しました。スマート城郷の一環として、これらの業者と相談し、総合予約のモデルを作り上げました。実際の運用効果はとてもよく、利用者にも大変役立っています。

また、科学技術の進歩発展により、一部の電気通信業者は「NB-IoT」という技術を運用し始めました。都市部における駐車場探しは困難であり、路上駐車のできる場所を探すにはデータの指標が必要となります。従来、駐車場の設置にテクノロジーを利用することは稀でしたので、巡回スタッフが一時間に一回巡回し、駐車票を発行し、その後もう一度巡回する必要がありました。支払いのためには駐車票を持ってコンビニへ行く必要があり、時間や労力がかかっていました。利用者もそれに慣れていましたが、「NB-IoT」のようなモデルによって、モバイルによる駐車代支払いが可能となりました。各駐車スペースに設置された「NB-IoT」感知器が駐車時間を感知するため、駐車票を発行するための巡回の必要はなくなりました。こうしたサービスには、「磁気チップ」を埋め込むなどのインフラ建設が必要です。現在、スマート城郷の一環として、我々工業局が手本として建設するものと、地方政府が自ら建設するものを合わせ、10都市において4万個の磁気チップの設置を完了しました。このような駐車場のモデルが完成すれば、さらに付加価値を高めていくことも可能です。例えば、近くの店舗の主人が、ある人の駐車時間を知ることができれば、システムを通じて車両の持ち主に割引券を送ることもできます。そして駐車していた人が用事を済ませた後、その店舗で1割引のチケットを使ってデザートを買い、家族へのおみやげにするといったことが可能になります。そのような応用方法も、一つのモデルだと言えるでしょう。

また、地方創生の観点から言えば、より多くのエンジニアが彼の生まれ故郷に帰り、故郷にテクノロジーをもたらし、農村地域での就業機会を創造してくれればと願っています。そこで、私たちは「帰郷創業」という制度を作り上げ、都市部で仕事の経験を数年積んだ後に故郷へ帰る若者に対し、創業資金を提供することにしました。彼らが都市で学んだテクノロジーや生活スタイルを、故郷に持ち帰ってくれることを望んでいるのです。例えば高齢者の配食サービスというソリューションがあるかもしれませんし、同時に配食サービスの情報を高齢者の子女に知らせる方法についても、同様のモデルが考えられるでしょう。我々はスマート城郷の一環として、業者による(経費)申請を提供しています。それは、若いテクノロジーの要素を地方と結びつけたいと願っているからです。我々は青年が帰郷して創業するためのハードルを出来る限り低くするために努力しています。ですが、計画の提出にあたってはその永続性を要求することも忘れてはいません。補助金があるときだけ計画し、補助が終わればなくなってしまうのでは困ります。

Q5:最後の質問です。呂局長はTJPOの主任を兼任されていますね。TJPOは、例えば日本の大手企業の台湾工場設立や技術交流など、これまでに日本と台湾の企業の連携を多数サポートしてこられました。そこで、台日連携に関する今後の展望や、予想される課題について、局長の考えをお聞かせ願えないでしょうか?

TJPOが台日産業連携を推進するにあたっては、工業局が主要な役割を担っています。私が主任を務めているのも、それが理由です。もちろん資策会(台日センター)の皆さんも、大いに協力してくれました。我々は部門間プラットフォームにおける仕事の成果について、毎年定期的に経済部へ報告しています。台湾は現在「高付加価値製造センター」、「先進半導体製造センター」、「高度テクノロジー研究開発センター」等の政策を推進していますので、日本の材料メーカーや設備メーカー等とも、積極的に連携を進めたいと考えています。特に、半導体の投資について、TSMCは台湾において引き続き5ナノ、3ナノ、2ナノの投資を行う予定ですが、そのいずれについても材料メーカーや設備メーカーの協力が必要になるのです。例えば、我々は今までにも、日本の信越化学、日立化成等の材料メーカーや、TEL(東京エレクトロン)、DISCO 等の設備メーカーとの間に、一定の協力関係を築いてきました。

日本企業が台湾においてTSMCとともに3ナノ、5ナノのプロセスを進めていくやり方としては、TSMCが必要とする材料や設備を製造することが、一つの重要な課題となります。もう一つ、我々が高付加価値製造センターを推進しているのは、半導体分野に限りません。紡績、食品、機械加工などもその対象なのです。例えば紡績業の場合、台湾の機能性衣類の生地の品質は悪くありませんが、日本の東レ等と同じレベルに到達するには、まだまだ研究すべき課題が残されています。特に、日本は循環経済分野について、原材料を節約して競争力のある製品を作り出すのが得意です。TJPOのサポートのもと、私が何度も日本を訪問し、企業と会談を行って来ました。先程話した色んな分野についての台日連携は今後努力を続けていくべきだと考えています。

コロナウイルスの蔓延により、サプライチェーンは変えなければなりません。以前は利益の法則に則ってコストの低い場所を求め、雁行モデルに従って中国大陸や東南アジアへの投資を進めてきました。もちろんこうした方法はこれからも存在し続けるとは思いますが、多くの人々が、自社の使う材料や設備について、自国内で一定の基準量を調達しようと考えるようになりました。また近隣諸国との需給関係もさらに緊密になるでしょう。また感染症拡大により、人と人が直接接触することが困難になりました。特に、ビジネス出張者が14日間の隔離を必要とすることなどは、いずれも下半期に直面しうる課題となるでしょう。

我々工業局と日本経産省の北東アジア課との架け橋交流会議は、半年に一回のペースを維持しています。上半期の会議は、感染対策のためテレビ会議を採用しました。下半期は状況により決定します。可能であれば直接顔を合わせて会議を行いますが、それができなければテレビ会議を採用するでしょう。連携における議題は、時勢に合わせて調整していくことが必要ですが、連携の必要性は無くなりませんし、今までの緊密な関係が維持されることにも変わりはありません。

我々は、日本の優秀な設備や材料メーカーが、あらゆる形で台湾と緊密な協力関係を築いてくれることを望んでいます。例えば台湾への投資を行うことも、一つの方法です。日本企業が台湾で研究開発センターを設立したり、台湾への投資を増加したりすることで、より密接なサプライチェーンを構築してくださることを望んでいます。将来の5G応用分野についても、日本での利用は台湾より早く開始し、台湾はオープンシステムの考えに基づいて各国の良いアイデアを吸収しようとしています。台湾メーカーが楽天5Gサプライチェーンに参入しています。台湾にはそのオープンアーキテクチャーを一緒に作り上げ、競争力を高めていく十分な力量があることをお伝えしたいと思います。オープンな態度であればあるほど、国際的な支持を得ることができ、国際的なサプライチェーンもより早く形成されるでしょう。これは、我々の過去の経験からも言えることです。将来5GやAIの応用分野においても、オープンな環境さえ用意されていれば、台湾と日本が過去の緊密な協力関係を基礎としてさらに前進し、両国の産業界がWin-Winの関係を築くことが、必ずできると考えています。

Q5.5:米中貿易戦争の深刻化により、コロナ感染症の蔓延前にも多くの台湾企業が台湾への回帰投資を進めていました。コロナ感染症が拡大し始めた後、こうした台湾企業の回帰投資のスピードや状況にも影響はあったのでしょうか?また台湾企業が台湾へ回帰した後、台日連携にはどのような新しいチャンスや変化があったのでしょうか?それらのことについて、局長の意見をお伺いしたく思います。

我々は「台湾企業の回帰投資を歓迎する政策」の他、「中小企業の投資強化」、「台湾に根を張る投資」という三つの政策を推進しています。5月の時点で、この三政策のもたらした投資は総額1兆元を超えました。このような勢いはコロナ感染症の影響を受けることはありませんでした。なぜなら、昨年台湾へ里帰りした企業は大企業がほとんどでしたが、昨年下半期から今年にかけては、そのサプライチェーンを構成する中小企業が、続々と台湾への回帰投資を果たしたからです。また、冒頭でお話ししましたマスク国家チームの活躍で、台湾や世界の人々に台湾製造業の能力や、製品の品質や効率が知られるところとなりました。台湾製品は、人々が安心して身に付けることができるものです。ですから、製造業者は台湾の投資環境の良さを改めて認識したのです。Tとは台湾の頭文字ではなく、Trust(信頼)の頭文字なのだと、彼らは言いました。例えば、マスクが製造された後、国際的な必要に鑑み、いくつかの友好国へも寄贈しましたし、のちにはメーカーからの輸出も開放しました。我々の寄贈したマスクは、ホワイトハウスの役人たちも身に着けていました。ホワイトハウスの役員が身に着けるということは、検査に合格したということですから、それは台湾の製造能力に対する国際的な証明とも言えるでしょう。我々はまた、総統が言う「Taiwan can help, Taiwan is helping」を積極的にサポートしていますが、その背景には台湾の優良な製造業の基礎があるのです。

米中貿易戦争をきっかけとして、サプライチェーンが移動し始めました。台日関係がもともと緊密ですから、こうしたサプライチェーンの移動により、台湾はスマート製造に結びつける新しい技術など、日本から学ぶチャンスだと認識し、日本も台湾における基準や異なる生産方法を参考にすることができます。台日双方の交流をより活発にし、お互いの産業競争力を共に高めることで、人類によりよい生活と便利な製品をもたらすことができるでしょう。台日連携にはすでに素晴らしい基礎があります。それこそが、工業局がTJPOを設立し、台日産業連携を推進する専門機関とした理由です。短期的には、感染症の影響からの復旧に時間を取られることでしょう。しかし台湾の感染防止対策はうまく進んでおり、復旧も早く済みます。ですから、まだ面と向かって議論を行うことができない国家が多い中、台湾と日本は早くからブレインストーミングをして、より良い解決策を探っていくことができます。産業の競争力を更に高めるためには、皆さんがこのチャンスを生かすことが必要だと考えています。