AI投資の蜃気楼を解明-台湾AIスタートアップ・エコシステム図を10分間で掌握(1)
發布時間 : 2021-06-11

ライター:歐雨瑞(資策会/サービスイノベーション研究所  チーム長)
轉載自FIDIT
Alpha Goが突如として姿を現し第3次人工知能革命をもたらした後、このAIブームはスタートアップ界でも席巻しました。AIを提唱する新鋭企業の多くが資本市場で人気を集めています。Kneron、UMBO CV、MoBagelなど、ここ3年の間に、多数のスタートアップ企業がクラウドファンディングの実績で快挙を成し遂げています。AIは確かに現在のベンチャーキャピタル界の新たな流派になりましたが、技術革新のスピードは速く、各種革新的なアプリケーションが続々と輩出されており、過去にビッグデータ、IoT分野から始めた多くのスタートアップもAI分野へ邁進し、「今の是にして昨の非なりしを覚る」という、投資家が新分野の全貌と動態を把握することが極めて難しい状況になっています。台湾でどのスタートアップ企業が現在AI分野へ参入しているでしょうか。主流となるアプリケーションにはどんなものがあるでしょうか。どんなテーマが最も利益を得る見込みがあるでしょうか。資策会IDEAS Labでは各種スタートアップ企業の公開データを収集し続け、テキストマイニング技術を通じて、現在の台湾AI分野のスタートアップ分布の概況および資本市場の発展状況を整理します。そして、AIスタートアップで成功すると思われるモデルと注目の事例を5種類にまとめて、台湾AIスタートアップ動態データベースを作成しました。投資側と起業側がAIスタートアップ・エコシステム全体の様子を即座に把握するサポートができるよう願っています。
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一、調査の背景と方法
スタートアップ企業の技術、製品、経営状態は元々変動性の高いデータに属し、AIという新興分野での変化はさらに加速しています。現在、台湾には確かに多くのスタートアップ・エコシステムの定期調査があり、私達に大きなビジョンをもたらせてくれますが、比較的長い調査周期はAI分野においてはデータの時効という問題が浮上します。
IDEAS Labはデータの包括性とリアルタイム性の双方に配慮し、半自動式の方法を採用しています。多くの異なる公開データソースを統合して、データの採取とリアルタイムでの分析を提供し続けています。IDEAS Labは会社登記、政府によるスタートアップ補助/助成計画の公表プラットフォーム、スタートアップアクセラレーターのプラットフォーム、イノベーション創業コンペプラットフォーム、スタートアップ人材募集プラットフォーム、スタートアップ関連メディア等を含んだ、20種類以上のデータソースにスキャニングを行い、スタートアップ企業の動態チェックを行う完璧なフレームワークを確立しています。
データ処理では、CB Insights、機器之心(Synced)、IT桔子等、様々な主要スタートアップとテクノロジー企業のデータベースを参考に、AI企業分類のフレームワーク、定義と辞書を制定しています。採取したデータに対して初歩的なフィルタリングと分類を自動的に完成してから研究スタッフによるチェックを行っています。現場インタビューとその他の第三者の参考データを組み合わせてデータベースへの読み込みを完成させます。
データ分析では、リアルタイムでスタートアップの技術カテゴリー、応用分野、ビジネスモデル、資本金の分布等の構造分析、そして設立時期、資本金、クラウドファンディングの金額等、時系列で変化するトレンド分析を提供しています。
二、台湾AIスタートアップ全体分布の総覧
この度公表された台湾AIスタートアップの調査研究では2010年以降に設立したスタートアップ企業をスキャニング対象とします。3,000以上のスタートアップ企業の元データの中からAI技術発展、関連製品または応用サービスの提供に参入している事業者、合わせて218社をフィルタリングしました(2020年9月までのデータ)。
IDEAS Labは前述の主要なテクノロジー企業のデータベースとメディアの分類を参考に、比較的大きな範囲の応用分野に統合しました。マーケティング/販売/顧客管理、AI企業、製造、金融/保険、ロボット/スマートデバイス、医療/健康、VR、スマートシティ/交通/農業等が含まれ、また各分野内で参入事業者が使用する技術の種類、例えば機械学習、マシンビジョン、自然言語処理等の主流となる技術に区別しています。AIスタートアップ・エコシステム全体概観は下記の図で示した通りです。
図2-1  台湾AIスタートアップマップ
図2-1 台湾AIスタートアップマップ
スタートアップ企業が参入するAI応用分野の分布によると、マーケティング/販売/顧客管理分野に参入している企業が最も多く、16.51%を占めています。続いて医療・健康分野が16.06%を占め、3番目は製造分野で9.17%を占めています。一方、反対に比較的少ない応用分野にはVR/AR、自動運転技術、情報通信ネットワーク、新聞/メディアなどが含まれます。マーケティングカテゴリーのAI応用サービスに参入する企業が多いのは、需要が比較的幅広く、多くの産業にとって主要な経営活動であり、かつマネタイズの周期が比較的短く、前期の投資が比較的少ない等の要因だと考えられます。一方、医療・健康分野では、台湾の健全な医療体系とデータ収集チャネルに関連して、この分野の創業テーマにおいて競争上の強みをもたらしています。一方、製造業はAI技術導入に対する需要が高く、積極的に取り組んでいます。台湾の堅実な製造基盤も豊富なプロセス経験を有する創業チームを生み出しています。
図2-2  台湾AIスタートアップ参入分野の分布
図2-2 台湾AIスタートアップ参入分野の分布
スタートアップ企業が所有または運用する技術の種類からみると、機械学習が最も多く、24.77%の事業者が関連技術を使用しています。続いてはマシンビジョン(視覚画像認識を含む)で21.36%を占め、3番目は自然言語処理で17.89%を占めます。位置測定、知識グラフ、モデル予測、プラットフォーム/フレームワーク等の技術は比較的少なくなっています。大部分のAIの基礎である機械学習技術のほか、マシンビジョン、自然言語処理が最も主流な技術となった原因は、やはりインタラクティブモデルの大部分を含んでおり、また各種AIシステム/プラットフォームのデータ取得に必要となる処理過程だからです。
図2-3  台湾AIスタートアップ主要技術の分布
図2-3 台湾AIスタートアップ主要技術の分布
AI分野のスタートアップ企業の設立時期からみると、2016年からのAIブーム再燃後、2017年にAI関連の創業がピークに達し、44社のスタートアップがこの1年で設立されました。この後は徐々に下降し始めて、需要と供給の状態およびエコシステムが本来の正常な形に段々と戻りました。応用分野を合わせて見ると、マーケティング/販売/顧客管理、医療・健康、製造等の需要が比較的明確な分野では、スタートアップ企業が市場参入を続けています。
図2-4  台湾AIスタートアップ設立時期の分布
図2-4 台湾AIスタートアップ設立時期の分布
AIスタートアップのビジネスモデルは、ソリューション統合、ソフトウェアサービス、プラットフォームサービス、ハードウェア端末、チップモジュール等を含む5種類にまとめられます。中でもプロジェクト志向のサービス形式であるソリューション統合、ソフトウェアサービスが64.67%に達する一方、プラットフォームサービス、ハードウェア端末、チップモジュール等、製品志向のビジネスモデルは極めて少なくなっています。現在のAIスタートアップ事業者が提供するサービス形式は高度なカスタマイズ、プロジェクト形式が多数を占め、標準化を形成可能な製品またはサービスは依然として少ないことが顕著に現れています。
図2-5  台湾AIスタートアップビジネスモデルの分布
図2-5 台湾AIスタートアップビジネスモデルの分布
スタートアップの所在地からみると、極めて不均一な地理分布が現れていて、すべて直轄市の6市および新竹県・市に分布しています。また台北・新北に極端に集中して台北市だけで74.31%を占めます。AIのような新興技術の分野では、人材、潜在的なビジネスチャンス、海外への交通手段を持つ都市の重要性が目立ちます。
図2-6  台湾AIスタートアップ地理的分布
図2-6 台湾AIスタートアップ地理的分布
スタートアップの規模の分布で公開データから把握できる資本金のデータ分布は、ほぼM型になっています。100万~500万が最多で、続いて1,000万から5,000万です。AI分野のスタートアップの分布では、初期段階の企業が多くを占めていますが、資本金に一定のハードルが存在し、存続可能なスタートアップでは一般的に資金規模が小さくないことが明らかです。その他、注目すべきは資本金が1億以上の事業者も多く、AIのような人気分野で先端のスタートアップは資本を引きつける力に優れていることを反映しています。
図2-7  台湾AIスタートアップ資本金の分布
図2-7 台湾AIスタートアップ資本金の分布
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